想い 〜剣心 



 例えるなら、お主は「空」。
 天高く、
 どこまでも澄み渡り、かつ、
 雲一つない青空・・・
 濁すものなど何もなく、
 汚すものなど何もなく、
 さりとて・・・
 荒れ狂う嵐が来ようとも、
 お主は常に青空であり続ける、雲、一つなく。
 その輝く陽の光で、すべてを一蹴してしまうのだ。

 ・・・だから、そう・・・
 ・・・お主を汚すことなど、誰にも出来ないのだ。

 青空は青空であり続ける、どこまでも・・・どこまでも、
 果てなく。
 そうとも・・・その青空の中にどうして、己が存在できよう。
 存在して・・・この「空」を独り占めにしようなどと、
 どうして言える、どうして考えられるッ?
 そんな、あまりに罪深いことを・・・。
 あの「空」は拙者一人のものではないッ。
 その瞳に映るであろう、皆のものッ。

 わかっている、そんなことはッ。
 わかっているが・・・

 抑えられぬ、この衝動を。  抑えられぬ、この秘めたる情念をッ。

 だから・・・側にいる。
 側に、傍らにいることで己を・・・制御する。

 このままでいい・・・
 拙者はこのままで、
 この男の傍らで、
 このまま・・・

 それだけが、拙者の至福の時なのだから・・・

 「左之助・・・」




[  想い 〜左之助編  ]