めにゅ〜へ戻る(笑)!

8月9日(水)   高畑勲監督のトークとアニメ「セロ弾きのゴーシュ」

 世の中、「ゲド戦記」が公開されている昨今。
 8月8日(火)、高畑勲監督のトークとアニメ「セロ弾きのゴーシュ」が地元で開かれた。
 コンセプトは、親子で上映会に参加し、高畑監督の話を聴こうというものだ。
 「セロ弾きのゴーシュ」は、1982年:オープロダクションにて劇場用アニメとして制作。 監督(演出)は高畑勲さん、企画に小松原一男さんが、背景はあの椋尾 篁さんが関わっている。
 全編、椋尾さんが背景をすべて描かれているだけあって、あの独特な淡い色彩は 世界観に実にあっていて、日本の風景の美しさや穏やかさをうまく表現されていた。
 主人公のゴーシュが、家である水車小屋でセロを弾く場面があるが、音程を取るその左手の 指先。一つ、一つ弦を押さえなければならないが、それをしっかり、ごまかさないで 描いているとご本人からのお話で触れていた。アニメだからと、手は抜きたくなかったらしい。 「弾くのだから弾かせたかった」のだという。実際に、映像に流れている、つまりはセロ(チェロ)を 弾いている場面を録画し、上がってきた音楽に合わせて指先もしっかり、弦を押さえるように セル画を描いたのだそうだ。
 実際、楽器を扱っている方がこの場面を観て、その正確さに驚いていたと高畑さんご自身が 笑って話されていた。
 話を聴いていると、この頃から現在のアニメ制作に繋がる、おおむねの筋はできあがっていたようだ。
 つまり、「絵に声(音)を合わせる」のではなく、「声(音)に絵を合わせる」。これが高畑監督の こだわりのようである。
 ただし、この手法は「セロ弾きのゴーシュ」に関して言えば、音楽のみにおこなったようだ。
 代表作「おもひでぽろぽろ」では、「声に合わせて」制作されている。 まず実際に役者さんの台詞を録音してから絵のコマを合わせているのだ。 キャラクターの唇や表情が、しっかり一致して自然に見えるのはそのためだ。
 「おもひでぽろぽろ」は1991年に制作されているから、これ以前にこの制作方法を 主軸にしていたと考えていいだろう。
 「セロ弾きのゴーシュ」は、ベートーベンの「田園交響曲」をメインに流しながら物語を進めていく。 だが、ただ流すだけでは意味がない。そこに浮かぶ情景やイメージをうまく背景やキャラクターに絡ませ、 かつ、子供が引き込まれやすいような工夫を凝らしていた。原作が宮沢賢治でもあるから、 猫やカッコウといった動物も、興味を惹きやすいような演出をされていることがわかる。
 最初にゴーシュの前に現れるのは猫。ゴーシュの弾く「インドの虎狩り」という曲のために 踊るように身体が動くのだが、曲のおどろおどろしさでにわかな恐怖を感じつつも、 猫の動きが面白くて笑いが起こり、子供は目が離せなくなっていた。
 うまく子供の興味を惹きつけながら、物語を通して何を訴えていきたいのか。それが しっかりと表現されていて伝わってくる。
 表現の中で伝えることは難しいことだと思う。言葉で言えば早いことだろうけど、 物語を通して伝えることは、本当に凄いことだと思うし困難だと思う。
 子供の想像力に頼るしかないところもあるかもしれないけど、反面、子供の 理解力はずば抜けているのだろうとも感じた。
 また、こういった作品をぜひ、手がけてもらいたいものだ。
 でも・・・70歳なんだよね・・・(笑)。
 もう無理!? いや、そんなことはないよね、高畑監督!?
 トークの中でも、「もう歳だから作らないよ」なんておっしゃってましたけど・・・ そうおっしゃらず(><)! 短くてもいいから、何か制作してほしいなぁ・・・♪
 高畑さん、外見は温厚そうな、本当に優しげな「いいおじさん」の空気なのだけれど、 一度作品のことやアニメのことを話し出すと、そのこだわり、情熱などがひしひしと 伝わってきた。作品に対しての厳しさ、アニメーションの歴史やおもしろさ、 語り出すと止まらない・・・といった具合に、一人舞台を展開されていた。 対談方式なんてとんでもない、二人が左右にいらっしゃったけれど、 付けいる隙などないほどに語り尽くしてくださいました(笑)。
 またいつか、お話しが聴けたらいいな。
 職人技を、職人の魂を。垣間見たような・・・そんな思いにさせられた時間だった。
 どうか、いつまでもお元気で! そしてまた新作を、ぜひ!!
 写実的な表現が多いから、娯楽的・・・とは言い難いけれど。でもやっぱり、 高畑さんの作品は大好き。またいつか、制作して頂けたらいいな・・・♪